連載
芽吹いたばかりの若葉を、
私たちは、摘みます。

みじかい旬をからだで感じ、楽しむこと

東京のレストランを閉じて地方に移住した友人と久々に話をした。

東京にいるときは、季節のメニューを提供するときに、全国から食材を取り寄せていたから、北から南まで追いかけると2ヶ月間ほど提供できたけれど、地元の食材をつかって料理するようになって、野菜の旬がとても短いことを身にしみて感じていると言う。

道の駅で山のように採れた山菜を見かけて「次はこの山菜を使うメニューを考えよう」と、翌週買いに行くと「もう終わりだよ」と言われることが何度もあったそうだ。「メニューを考えてから買おうとするとあっという間になくなるから、“メニューが先”じゃなくて“食材を掴むのが先”になったよ」と。

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ここ1年、感染症の影響ですっかり生活の形が変わり、楽しむ方法が減った。家の近所を歩き、スーパーで買い物するのが唯一の娯楽になった。

やり方が変わると、楽しみ方も変わる。

他人との距離ができて遠くなり、みんなで集まることがなくなったら、今まで通りの楽しみ方ができなくなった。でも、自宅の近所の同じ道を何度も何度も歩いていると、自然と草木や花で季節の巡りを知り、スーパーの売り場に並ぶ野菜の移り変わりを感じるようになった。旬を楽しむという、それまでの生活では知らなかった楽しみ方だ。

目で見て楽しむ、食べて楽しむ、香りを楽しむ。五感を使って、短い旬をからだで感じる。肌から取り入れるというのも、またひとつの方法だ。柔らかく吸収しやすい肌から旬をいただくと、なんて贅沢なことをしているのだろうと、自分を大事にできている感じがする。

旬という時間を感じる楽しさや、贅沢にいただくよろこびを知ると、自分もまた、毎日同じようなくり返しだと感じていた日々を、もっと大事にしようと思える。今だから感じること、わかること、できることがあるのだと。

旬の素材をいろいろな方法で取り入れ、楽しみながら、自分の中にある素材も出し惜しみなく生かし、使いきりたいと思う。

桜林 直子​

株式会社サクアバウト 代表取締役

2011年にクッキー屋「SAC about cookies」を開業。自店の運営のほか店舗や企業のアドバイザー業務などを行う。コラム、エッセイなどを投稿、連載中。2020年3月ダイヤモンド社より著書『世界は夢組と叶え組でできている』発売。​​

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