連載
芽吹いたばかりの若葉を、
私たちは、摘みます。

凍った心を溶かした温かいもの

30歳手前になって、アイデンティティ・クライシスに陥っていた。

「何が自分らしさなのかわからない・・・」
「若い頃、思い描いた大人から程遠い・・・」
「アラサーになってまで恥ずかしい・・・」

いろんな気持ちが入り混じり、どんどん、どんどん鬱になり、
夜あまりに涙が出てくるものだから、
アプリで鬱の治療ができるゲームを始めるほどだった。

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ゲーム「今のあなたの心の状況は?」
私「4.強く死にしたいと思う時がある」
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そんな選択肢を選ぶほど、心は疲弊していた。
就職を機に上京して7年目。ずっとずっと仕事に奔走してきた。

最終手段だと思っていたけれど、
思い切って。1週間ほど関西の実家に帰ることにした。

# 母の言葉が心を溶かした

実家は便利だ。座っているだけでご飯が出てくる。

お父さんが腕をふるった欧風カレーを平らげ、のんきにテレビを見ていたら、お母さんがおもむろに何かを引き出し、見せてきた。私が生まれたときの写真に、お母さん直筆コメントが添えられたフォトブックだった。

「あかちゃんってちっちゃくてかわいいな ちっちゃいけどあったかい 自分にも赤ちゃんが産めた 私がお母さんと呼ばれる存在になった とっても不思議 ちょっぴり自慢」

「産まれたてのあっちゃんを抱いているお父さん ほんとうにうれしそうですね」

「お母さんは、出産の途中で何度もくじけそうになったけど、あっちゃんは最後まで元気な心臓の音で励ましてくれました ほんとうにありがとう そして、9月3日に生まれてきたあっちゃん、おめでとう」

まだ20代だった母の言葉。そこには母、父、おばあちゃんやおばさん、今はなきおじいちゃんなど、沢山の大切な人に抱かれた小さな私の姿が残されていた。

こんなに愛されて生まれたんだなあ。そして今も変わらず愛してくれているんだなあ。

家族の温かさがお腹のそこからじんわり沸き上がってきて、温かい涙となり両目から温泉のように溢れ出した。

「死にたいとか思ったらあかんな。ちゃんと幸せになろ」

深夜、実家のリビングでこう誓った。

# 銭湯が心を溶かした

心機一転、家を引き払い「ホテル暮らし」を始めたのだが、ホテルのシャワールームがドブ臭い・・・それなら仕方ない、銭湯に行こうと思い立った。

周りのサウナーがさんざん披露してくれた知識を頭に浮かべ「12分お湯、2分前後水、5分ほど休憩・・・」交互浴を3セット。

そんな日を数日繰り返してみたある日の夜、私はベッドでこうつぶやいていた。

「あ〜幸せやな〜・・・」

びっくりした。寝る前に1人ベッドでこんなことを思ったのは、ほぼ人生初。
交互浴をすることで自律神経が整い、幸せホルモンが溢れ出していたのだ。その感覚は明確にあり、本当に「幸せ」という脳内物資が脳にじんわり溢れ出す感じ。

そこで自分は慢性の冷え性で、人生ずっと自律神経が乱れていたことに気付いた。と同時に、温めることでそれが結構簡単に改善されることも知った。毎日新陳代謝を高めることで、肌もすべすべになっていた。

銭湯にハマり切った私は、そこからネットで「温める」ことについて調べまくるなかで、「温肌」を掲げるON&DOというビューティーブランドを知った。自分の名前である「温美」と文字面が似ているのもあり興味を持った。

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「温肌」という、肌・体・心のベストバランス。それは、複合的なウェルネスの結果です。良質な栄養を健全に代謝しながら、体をしなやかに動かすことで得られる基礎代謝の温もりと、充足した心の状態がもたらす調和のとれた肌こそが美しい。ON&DOはこの、肌・体・心のベストバランスを「温肌」と定義し、ずっと研究してきました。
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まさにこれだ!と思った。いま自分は、きっと「温肌」なのだ。

人は温めることで幸せになれる

心と体を温めることで、人は幸せになれる。
実家と銭湯を通して、知った。

私の名前は「温美」。温かくて美しい、と書く。

「温かくて、みんなを包み込む、太陽みたいな優しい人」。
ずっとそういう意味だと思っていて、プレッシャーを感じていた。

「お前、あつみじゃなくて、つめみやな、冷たいから」
そう言われた日から温美を名乗るのを申し訳なくなった。
だから、活動名は「村田あつみ」と、ひらがなにしていた。

でも、わかった。

温めれば美しい。

こんな簡単なことだったのか、はよゆうてえや。
今日も、着替えとシャンプーを持って最寄りの銭湯に向かう。

村田あつみ(あんみつ)​

1991年9月3日生まれ
株式会社ラブグラフ Co-founder & CCO
同志社大学 社会学部社会学科 卒​​

株式会社ラブグラフ共同創業者CCO。同志社大学在学中からWebデザイナーとして活動。新卒で入社したリクルートホールディングスを3カ月で退職し、現在は大学在学中に立ち上げたフォト撮影サービスを運営する株式会社ラブグラフのCCOを務める。経営戦略、ブランディング、デザイン開発、マーケティングに至るまでマルチにこなすWebクリエイター。​​

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