連載
芽吹いたばかりの若葉を、
私たちは、摘みます。

Vol.3 化粧品原料の研究開発者のおはなし。

私が化粧品の原料開発をやるようになって、かれこれ40年。
合成も、植物も、微生物培養も何でも、目的のモノをあらゆる手段でつくってきました。
その中でいちばん時間を費やしたのは植物の研究。向き合ってきた植物は170種類をゆうに超えます。

植物のつくりだす構造物は、複雑です。そういう意味でいちばん機能性を持っているのは植物でしょうね。なにせ動かず、何にも頼らずに生きているのは植物だけですから。

肌にとって大敵の紫外線は、植物にとっても必要であるとともに大きなストレス。なのでもともとは植物のなかでも花に興味がありました。幹や葉と比べて薄くて弱々しい花が、紫外線量の増える春夏に咲く。紫外線ストレスに耐える力を、物理的にではなく、化学的に秘めていると思ったのです。実際にさまざまな花から素晴らしい成分(特許を取得しただけで60種類にもなります)をつくり出すことができたのですが、なんとも、冬に咲く椿は盲点でしたね・・・。

ON&DOでの研究開発を機に、五島列島の椿のあらゆる部位を解析し、そのすべてを原料化することに着手。当然、冬に咲く花も、他にない強さをもっていました。ただ個人的に驚いたのは、椿葉のもつ力。葉なんてまったく眼中になかったものですから、それこそ盲点でした。

よくよく考えれば、それもそのはず。椿は常緑樹なので葉は年中紫外線を浴びていますし、芽吹いてから自然に落ちるまでに約3年。常緑樹のなかでもかなり長い期間紫外線を浴びていることになるのですから。累積で浴びる紫外線量なんて、私がこれまで見てきた植物・部位のなかでも断トツかもしれません。

大人葉が2~3年の間に蓄積したその底力はなかなか他では手に入りません。一方、若葉は春から初夏にかけてのこの時期にしかなく、生まれた瞬間から大量の紫外線を浴び、ダメージをものともせず、これから3年間生き残っていくためにものすごいスピードで成長する。大人葉とは違う、生まれたばかりだからこそのパワーを持っているのです。

旬の野菜や果物が栄養価も高くておいしいように、植物は季節ごとに最高のかたちでパフォーマンスを発揮するもの。とくに劇的に紫外線量が増える夏に旬を迎える若葉を、化粧品原料の開発者として、どうしても無視することはできなかった。夏の若葉を、なんとかして、夏の化粧品に活かしたいと思ったのです。

安定的に入手できる大人葉と違って、期間も数も限られている若葉。しかも若葉は、大切なエネルギー源ですから、すべてを摘んでしまっては椿の未来がありません。

今年頂く若葉は、約22,680枚。それを化粧品にして、3,500本。

旬の若葉の生命力を、3,500名の夏の肌に届けたい。 植物の力を、椿の力を、信じてみてほしいと思います。

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